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第二十八回 「正月支度」

明けましておめでとうございます。
どうか、本年も変わらず
この「皐月のコイの吹き流し」をご愛読くださいませ。

……と、書きつつも、これを書いているのは
2016年の年の瀬。
例年の年の瀬の
あれもしなくちゃ、これもしなくちゃと
気ばかり焦って、結局たいしたことができないという、
ムダな慌ただしさに耐えきれず、
ここ数年は、年末に大掃除をして
すっきりとした気分で新年を迎えるというのを
あきらめた。
窓ガラスの曇りも、サッシの埃も、
風呂の排水溝の黒ずみも、
換気扇の油もそのまま年を越す。

温かくなったら、のんびりゆっくり
ひとつひとつこなすことにしたら、
気分的にラクになった。

年末恒例行事だった大掃除は割愛したが、
食いしん坊の私は、
おせち料理は省略気味とはいえ、
何品か作って市販のものと合わせて、
ワンプレートおせちとして並べる。
独り暮らしで、帰省する家族も
年始に来るひともいないのだが、
こういうところはこだわってしまう。
ただし、今年は品数も厳選しての手抜き。

それでも、大掃除はしなくても、
おせちを肴に、杯をかたむけながら、
お笑い番組を見ないと、
正月が来た気にならない。

今年は、着物も着てみようかと思う。
誰もこなくても、どこにも行かなくとも、
まぁ、気分ね、気分。

で、お昼近くに届く年賀状を
たんねんに読むのが恒例。
もう何年も、いや、
何十年も会っていなくて、
年賀状だけの繋がりになっている友人知人が何人もいる。

しかも、
なかには、宛先から何からすべて印刷で、
添え書きひとつ書いて来ない人もいる。
それでも賀状が届けば
立派な安否確認。
元気にしているのかとほっとする。

近況が書き添えてあれば、なおうれしいが、
ただし、当の本人のことは1行もなく、
私の知らない家族の近況ばかり書き連ねてあると、
「で、あんたは?」とちょっとイラッとしたり。
家族写真の年賀状は、賛否両論あるけれど、
私はべつにかまわない。
しかし、本人が写っていなくて、
子どもの写真だけだったりすると
寂しかったりはする。

もらって嬉しい年賀状は
私への気遣いや、激励や、応援のことばが
添え書きされてあるものだ。
私も自分のことばかり書かずに、
相手への気遣いを書かないとなぁと反省する。

そうはいっても、
根が無精なものだから、
もらうのは好きだけど、正直書くのは煩わしい。
それでも、書いて出さないと、
もらえないので、なんとか頑張って書く。
裏面は印刷なので、
せめて宛名だけはと
汚い字ではあるけれど
200枚ほどを手書きで書く。

添え書きもなるべく書くようにしていたのだが、
今年はいろいろあって、エネルギー不足。
添え書きするスペースが
やたら狭いデザインにするという苦肉の策をとった。

そんなこんなの年の瀬だけど、
皆さんがこれを読むころには、
無事年を越し、
着物を着て、おせちをつまみ、
お笑い番組を見て笑い、
年賀状の向こうに見える
あの人この人の顔を思い浮かべて
いつもどおりのお正月を迎えていることだろう。

いつもどおりがいちばん。

皆さまも、どうか良いお正月を。
そして、良き一年を。

- Profile -

東 千絵

東 千絵 (ひがし ちえ)

「プロダクション・アーニング」代表。CM・番組ナレーション、イベント出演、司会、映画・ドラマの方言指導などを手がけるかたわら、地元の演劇集団K-CATに所属。
電子書籍「そうだったのか、日本食」など、ライターとしても活躍の場を広げている。

バックナンバー

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9月1日 第三十六回 「苦手は、悪知恵で乗りきった」
8月1日 第三十五回 「命の終わらせ方」
7月1日 第三十四回 「お酒と私」
6月1日 第三十三回 「千里の道も一歩から」
5月1日 第三十二回 「女ごころの最後の悪あがき」
4月1日 第三十一回 「ドラマオーディション体験記」
3月1日 第三十回 「逃げ道が見つからないので、きんかんの甘露煮」
2月1日 第二十九回 「そのドアを開けてはいけない」
1月1日 第二十八回 「正月支度」
12月3日 第二十七回 「劇処 シャッフルステージ」
11月1日 第二十六回 「乗っかりそびれたハロウィン」
10月4日 第二十五回 「女って、生きているかぎり闘い続けるものなのよ」
9月3日 第二十四回 手塩にかけたナレーターたちのデビュー
8月1日 第二十三回 大人、大人、言いすぎじゃないの?
7月5日 第二十二回 靴が見つからない
6月8日 第二十一回 地獄の抑止力
5月3日 第二十回 最後まで笑顔
4月3日 第十九回 桜を見ずに逝った人
3月1日 第十八回 うるう年の薔薇
2月1日 第十七回 奥手な女子の初バレンタイン
1月2日 第十六回 愛しの近江町市場
12月1日 第十五回 どのツラさげて
11月1日 第十四回 結婚式の思い出
10月1日 第十三回 輝きの秘密は、言わぬが華
9月1日 第十二回 魔女と仙女と魔法使い
8月1日 第十一回 去っていった古女房
7月1日 第十回 恥ずかしかった誕生日の夜
6月1日 第九回 撮影裏ばなし
5月1日 第八回 歌うシンデレラと、歌えない仙女
4月1日 第七回 台湾、満喫、満足、満腹の旅
3月1日 第六回 熟年サラリーマンのプラトニックラブ
2月1日 第五回 報われないけど、やり甲斐のある仕事
1月1日 第四回 泣きたいときは泣いてもいいのか
12月2日 第三回 持てあました、夢見る権利
10月30日 第二回 煙草とトワレ
10月1日 第一回 ヒロインはいつもリカちゃん