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第二十六回 「乗っかりそびれたハロウィン」

これを書いている今は、
まさにハロウィンイベントまっさかり。
街を歩けば、あちこちにハロウィンの飾り付け。
テレビをつければ、ハロウィン用の
お菓子や料理や仮装用衣裳やメイク用品の紹介。
こういう仮装をやっちゃうと
法に触れるから気をつけましょう…
みたいな特集までやっている。
金沢でも、仮装パレードが行われているらしい。
経済効果はすでに、バレンタインを追い抜いて、
クリスマスにも迫る勢い。
そして、スーパーのチラシすら、
あたりまえのように、ハロウィンパーティ仕様。

いろんな人が、いろんなところで言っているが
私も言わせてもらいたい。
「いったい、いつからこんなことになったんじゃい!」

私は子どもの頃、ハロウィンの存在を知らなかった。
中学だか、高校の英語の教科書で
はじめてその存在を知ったのだが、
実際に仮装して大騒ぎする集団を見たのは、
20数年ほど前、
観劇旅行で行った東京の地下鉄。
それは全員外人だった。

突然魔女や、フランケンシュタインや、
かぼちゃのお面をつけた外人の集団が
奇声を発しながら電車に乗り込んできて、
私はかなりびびった。
「あ、これがハロウィンとかいうやつか」と
気がついたものの、
こういう感じって日本人には
定着しないと思った。
電車に乗り合わせていた日本人のほとんどは、
困ったような、なんだかばつの悪い感じで
半笑いでうつむいていたのだから。

それが、すっかり定着。
保守的で、頭の固い私は、
子どもの頃になかった行事を
すんなり受け入れるキャパがない。

家に小さい子どもでもいて、
「ハロウィンやりた~い!」
とかせがまれでもすれば、
この波に乗れたのかもしれない。

しかし、熟年女の独り暮らしにとって、
この行事はテンションが高すぎる。
すっかり乗りそびれてしまった。

乗りそびれたから言うわけではないが、
カボチャのランタンをかたどった
オレンジ色のあのキャラクター。
私は、1ミリも可愛いと思わない。
むしろ、気持ちわるいとすら思う。
あれを家に飾ったり、
持ち物につける気はさらさらない。

クリスマスの飾りは、どれも心から可愛い。
楽しんで飾り付けする気にもなるし、
なんだかんだと買い足してみたくなる。

しかし、
ハロウィンの飾りに私の心は微動だにしない。

そして、仮装パーティーや、パレード。
やっている人に水を差す気はないし、
そういうことにノリノリになれたなら
楽しいだろうなとは思うのだが、
残念ながらハロウィンで仮装したいと思わない。

なぜだろう。

仮装の醍醐味が、別人になることだとすると、
私は舞台でさんざん別人格を演じてきた。
魔女やゾンビになったことはないが、
演劇人生38年。
バニーガールも、超ミニスカ網タイツ姿の愛人役もしたし、
婦人警官もやった。
スパンコールのついた着物で演歌も歌った。
唐草模様の着物で
「おひかえなすって」みたいな役もした(どんな役じゃい・笑)
カニのかぶり物を被って、
栗のかぶり物をかぶった奴と
ラブシーンも演じた(どんな芝居じゃい・笑)
シースルーの衣をまとった仙女さま、
フランス貴族みたいなドレスに突飛なカツラもつけた。
……もう充分だ。

だいたい、全員が仮装しているなかで仮装したって
目立たないじゃないか。

どうせやるなら、しっかり目立ちたい。
だから、ハロウィンで
わざわざ仮装する気にならないのかもしれない。

そして、
ハロウィンでかぼちゃを食べるくらいなら、
冬至にかぼちゃを食べたほうが、
一年中風邪をひかないので効率的。

同じ商業ベースに乗せられるなら、
日本古来の行事に乗っかりたい。

例えば、七夕。
七夕飾りのほうが、
ハロウィンの飾りより百倍可愛いじゃないか。
短冊に願いことを書いたら叶うなんてステキじゃないか。
一年に一度しか逢えないのに、
未来永劫逢い続ける究極の遠距離恋愛
彦星と織り姫。
ステキじゃないか。

どこかの、やり手仕掛け人さん。
七夕を一大イベントに
仕立てあげてくれないかなぁ。

それなら、乗っかる、乗っかりやすい。

- Profile -

東 千絵

東 千絵 (ひがし ちえ)

「プロダクション・アーニング」代表。CM・番組ナレーション、イベント出演、司会、映画・ドラマの方言指導などを手がけるかたわら、地元の演劇集団K-CATに所属。
電子書籍「そうだったのか、日本食」など、ライターとしても活躍の場を広げている。

バックナンバー

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9月1日 第三十六回 「苦手は、悪知恵で乗りきった」
8月1日 第三十五回 「命の終わらせ方」
7月1日 第三十四回 「お酒と私」
6月1日 第三十三回 「千里の道も一歩から」
5月1日 第三十二回 「女ごころの最後の悪あがき」
4月1日 第三十一回 「ドラマオーディション体験記」
3月1日 第三十回 「逃げ道が見つからないので、きんかんの甘露煮」
2月1日 第二十九回 「そのドアを開けてはいけない」
1月1日 第二十八回 「正月支度」
12月3日 第二十七回 「劇処 シャッフルステージ」
11月1日 第二十六回 「乗っかりそびれたハロウィン」
10月4日 第二十五回 「女って、生きているかぎり闘い続けるものなのよ」
9月3日 第二十四回 手塩にかけたナレーターたちのデビュー
8月1日 第二十三回 大人、大人、言いすぎじゃないの?
7月5日 第二十二回 靴が見つからない
6月8日 第二十一回 地獄の抑止力
5月3日 第二十回 最後まで笑顔
4月3日 第十九回 桜を見ずに逝った人
3月1日 第十八回 うるう年の薔薇
2月1日 第十七回 奥手な女子の初バレンタイン
1月2日 第十六回 愛しの近江町市場
12月1日 第十五回 どのツラさげて
11月1日 第十四回 結婚式の思い出
10月1日 第十三回 輝きの秘密は、言わぬが華
9月1日 第十二回 魔女と仙女と魔法使い
8月1日 第十一回 去っていった古女房
7月1日 第十回 恥ずかしかった誕生日の夜
6月1日 第九回 撮影裏ばなし
5月1日 第八回 歌うシンデレラと、歌えない仙女
4月1日 第七回 台湾、満喫、満足、満腹の旅
3月1日 第六回 熟年サラリーマンのプラトニックラブ
2月1日 第五回 報われないけど、やり甲斐のある仕事
1月1日 第四回 泣きたいときは泣いてもいいのか
12月2日 第三回 持てあました、夢見る権利
10月30日 第二回 煙草とトワレ
10月1日 第一回 ヒロインはいつもリカちゃん