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第二十二回 靴が見つからない

新しい靴がほしくて探しているのだが、
なかなかこれといったものが見つからない。
履いてみたいと思うデザインの靴は
外反母趾で幅広足の私にはきつくて5分と歩けない。
かといって、ラクで歩きやすいものは
なんだかオバサンくさいデザインのものばかりで、
さすがに履く気になれない。

ステキなデザインで、
なおかつ履き心地の良いものは、
びっくりするほど高かったりして手が出ない。

悩ましいところである。

このところ
すべてを満たす100点満点の靴に出会えていない。
いつも、どこかを少しずつ妥協して、
だましだまし履いていた気がする。

靴選びは、パートナーもしくは恋人選びと
似ていると思っている。

デザイン(見た目)重視で選ぶ人。
履き心地(相性)重視で選ぶ人。
ブランド(学歴や家柄)重視で選ぶ人。

安物買いの銭失いで、
ちゃっちいものを次から次へと買って、
履き捨てる移り気な人。

衝動買いして後悔する人。

決断力がなくて、
気に入ったものをすぐに買えず、
結局他の人にもっていかれて後悔する人。

これと決めて選んだら、
いつもきれいに磨いて、手入れをし、
傷めば修繕して、
長く長くはき続ける人。

間に合わせで買ったものを
しぶしぶイヤイヤ履いているので、
扱いが雑で乱暴なため、
どんどんみすぼらしくなって、
ますますイヤになり、
人の履いている靴にばかり目がいく人。

気に入った良い品質のものを
手入れしながら長く使えば、
時を経るごとに
なおさらしっくりと馴染んでくる。

亡夫は私にとって、
デザインも履き心地も抜群の靴だった。
多少くたびれては来ていたが、
それも味として気に入っていたのに、
ある日とうとう履けなくなった。

ずっと履き心地のいい靴で守られていたのに、
突然裸足で歩くことになってしまった。

歩く場所や、季節によっては
裸足もなかなか気持ちいい。
だんだん慣れてきて、
足の裏もそれなりに丈夫になってきたし、
裸足で歩くことで
今まで気がつかなかったことに気づけたりもする。

しかし、思わぬ小石やガラスでケガをしたり、
やたら地面が熱かったり、冷たかったりで、
裸足の侘びしさをしみじみ感じることもある。

前の靴と似たものを探してみても、
それはあくまで似ているだけで、
同じものではない。
それならば、前の靴と比べないようにして、

人に勧められた靴を試しに履いてみたこともある。
しかし、やっぱりしっくり来ない。

せっかく新調するのなら、
ショーウィンドウに飾られた
デザインも材質もいいのを履きたいが、
自分に似合わないので
ただただ、見ているだけになる。

これなら私に似合うかな?


ステキだな、履いてみたいなと思う靴は、
人のものだったりする。
こっそり時々借りて、丁寧に手入れして
そっと返したらダメだろうか?
なんてことも思うけれど、
履いてみたら以外と履き心地が悪いような気もする。

ときどき、間に合わせで履いている、
デザインも材質も好みではない靴が
ようやくこの頃履き心地が悪くはなくなってきたが、
おそらく、そろそろ
本来この靴が似合う人に、
横取りされる予感がしている。

ずっと履き続けていられる新しい靴がほしいけれど、
靴選びが難しすぎて、
けっきょく裸足で歩いている。

- Profile -

東 千絵

東 千絵 (ひがし ちえ)

「プロダクション・アーニング」代表。CM・番組ナレーション、イベント出演、司会、映画・ドラマの方言指導などを手がけるかたわら、地元の演劇集団K-CATに所属。
電子書籍「そうだったのか、日本食」など、ライターとしても活躍の場を広げている。

バックナンバー

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9月1日 第三十六回 「苦手は、悪知恵で乗りきった」
8月1日 第三十五回 「命の終わらせ方」
7月1日 第三十四回 「お酒と私」
6月1日 第三十三回 「千里の道も一歩から」
5月1日 第三十二回 「女ごころの最後の悪あがき」
4月1日 第三十一回 「ドラマオーディション体験記」
3月1日 第三十回 「逃げ道が見つからないので、きんかんの甘露煮」
2月1日 第二十九回 「そのドアを開けてはいけない」
1月1日 第二十八回 「正月支度」
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11月1日 第二十六回 「乗っかりそびれたハロウィン」
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9月3日 第二十四回 手塩にかけたナレーターたちのデビュー
8月1日 第二十三回 大人、大人、言いすぎじゃないの?
7月5日 第二十二回 靴が見つからない
6月8日 第二十一回 地獄の抑止力
5月3日 第二十回 最後まで笑顔
4月3日 第十九回 桜を見ずに逝った人
3月1日 第十八回 うるう年の薔薇
2月1日 第十七回 奥手な女子の初バレンタイン
1月2日 第十六回 愛しの近江町市場
12月1日 第十五回 どのツラさげて
11月1日 第十四回 結婚式の思い出
10月1日 第十三回 輝きの秘密は、言わぬが華
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4月1日 第七回 台湾、満喫、満足、満腹の旅
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