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第十四回 結婚式の思い出

結婚式に列席してきた。
芝居関係の後輩くんの結婚式で、
初めてスピーチまでしてきた。
たくさんの方たちから祝福され、
幸せいっぱいの新郎新婦。
心温まる演出などに、ほろりとしつつ、
私はあれこれ思いだしていた。

19歳から24歳くらいまで、
結婚式の司会を副業にしていた。
19のとき、結婚式場へ、
司会者として面接を受けに行った際に
運良くとても気に入られ、
よほど人手不足だったのか、
ほとんど講習も受けることもなく、
即仕事をすることになった。
ノウハウは、本を買って独学で学んだ。

ただ、あまりにも若かったため、
経験不足ではないかと(実際経験不足)
お客様に不安を与えるので、
年齢を訊かれたら25歳と応えるようにと言われ、
打ち合わせへ行くときも、
大人っぽい服装とメイクで行っていた。

「お若いですが、大丈夫ですか?」
というクレームを受けたことは皆無だった。
ちゃんと老けてみえたのだろう。
そこは、ちょっと複雑な心境である(笑)

今では、花嫁から両親への感謝の手紙は、
本人が読むのが定番になっているが、
当時は、司会者が代読することが多かった。

自慢ではないが(いや、自慢か)
どんなに文章の拙い手紙だろうが、
ありきたりな内容の手紙だろうが、
私は朗読のちから技で
感動の手紙にした。
会場のあちこちからすすり泣きが聞こえると
心のなかでガッツポーズをしたものだ。

そんな超絶生意気司会者だった21歳の私は、
自分の結婚式のときは、
式場から紹介された、
あまり慣れていない感じの司会者が
言いよどんだり、噛んだり、
せっかくの盛り上げどころを
さらっと流したりすると、
そのたびにマイクを奪い取って、
自分で司会をしてやろうかと思った。
隣に座る夫に
「あの司会者、ダメだよね」と耳打ちし、
「お前という奴は…」と呆れられた。

そういう夫だが、実はふつうの結婚式を
本当は望んでいなかった。

どこか、劇場を借りて芝居の公演仕立てにして、
お祝いは、チケット代金としていただくという
ことを考えていた。
芝居のラストは、タキシードを着た自分と
ウエディングドレス姿の私。
公演が終わったら、打ち上げを兼ねた
立食パーティで披露宴。

そういうのをやりたかったようだが、
準備の時間もなかったし、
それより何よりも、
情けないことに貯金が全然なかった。
資金もないのに、そんな破天荒なことを
スポンサーである両親にはとても言えない。
そんなわけで、双方の両親が希望した
スタンダードな披露宴に落ち着いたのだった。

じゃあ、金婚式あたりで、
そういうのをやろうかと話していたのだが、
76歳のタキシードと、
71歳のウェディングドレスに
付き合わされるお客様はたまったものではないだろう。
では、どうしたものかと知恵を絞っていたのだが、
夫は銀婚式から2年後に
この世を去ってしまった。

今は、結婚式も様変わりで
新郎新婦や友人たちが、趣向を凝らし、
型にはまらない思い通りのものにすることができる。

きっとあの世で夫は
うらやましがっていることだろう。

生まれ変わって、また夫と出会うことがあれば、
ぜひ、彼の思い通りの式を挙げてみたいと
そんなことを考えていた。

- Profile -

東 千絵

東 千絵 (ひがし ちえ)

「プロダクション・アーニング」代表。CM・番組ナレーション、イベント出演、司会、映画・ドラマの方言指導などを手がけるかたわら、地元の演劇集団K-CATに所属。
電子書籍「そうだったのか、日本食」など、ライターとしても活躍の場を広げている。

バックナンバー

10月1日 第三十七回 「またね!」
9月1日 第三十六回 「苦手は、悪知恵で乗りきった」
8月1日 第三十五回 「命の終わらせ方」
7月1日 第三十四回 「お酒と私」
6月1日 第三十三回 「千里の道も一歩から」
5月1日 第三十二回 「女ごころの最後の悪あがき」
4月1日 第三十一回 「ドラマオーディション体験記」
3月1日 第三十回 「逃げ道が見つからないので、きんかんの甘露煮」
2月1日 第二十九回 「そのドアを開けてはいけない」
1月1日 第二十八回 「正月支度」
12月3日 第二十七回 「劇処 シャッフルステージ」
11月1日 第二十六回 「乗っかりそびれたハロウィン」
10月4日 第二十五回 「女って、生きているかぎり闘い続けるものなのよ」
9月3日 第二十四回 手塩にかけたナレーターたちのデビュー
8月1日 第二十三回 大人、大人、言いすぎじゃないの?
7月5日 第二十二回 靴が見つからない
6月8日 第二十一回 地獄の抑止力
5月3日 第二十回 最後まで笑顔
4月3日 第十九回 桜を見ずに逝った人
3月1日 第十八回 うるう年の薔薇
2月1日 第十七回 奥手な女子の初バレンタイン
1月2日 第十六回 愛しの近江町市場
12月1日 第十五回 どのツラさげて
11月1日 第十四回 結婚式の思い出
10月1日 第十三回 輝きの秘密は、言わぬが華
9月1日 第十二回 魔女と仙女と魔法使い
8月1日 第十一回 去っていった古女房
7月1日 第十回 恥ずかしかった誕生日の夜
6月1日 第九回 撮影裏ばなし
5月1日 第八回 歌うシンデレラと、歌えない仙女
4月1日 第七回 台湾、満喫、満足、満腹の旅
3月1日 第六回 熟年サラリーマンのプラトニックラブ
2月1日 第五回 報われないけど、やり甲斐のある仕事
1月1日 第四回 泣きたいときは泣いてもいいのか
12月2日 第三回 持てあました、夢見る権利
10月30日 第二回 煙草とトワレ
10月1日 第一回 ヒロインはいつもリカちゃん