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第十二回 魔女と仙女と魔法使い

「で、あんたは今回、なんの役なの?」
9月16日から4日間、
舞台に出るから、観に来てほしいと電話した私に、
芝居のタイトルを聞くよりも先に、
何の役で出演するかを聞く、古い友人。

彼女はいつも、
私がどんな芝居を、誰とやるかよりも、
どういう役に挑戦するかが気になるようだ。

陽気な未亡人、おしゃべりな女中、頭の弱い道化師、
Mっぽい黒ウサギ、ワケありの売れっ子芸者、
欲深い後妻、ミッションスクールの校長などなど、
ここ7年の私の役柄は、まったく一貫性がない。

友人は、私が何を演じようと、必ずかけつけ、
応援してくれている。

今回の私の役は、仙女である。
そう告げると
「はい?いくらなんでも、今のあんたの見た目だと
羽衣で空は飛べそうにないがいね」
と、笑う友人。
まぁ、たしかに羽衣をつけたところで
せいぜいが15センチも浮き上がれないかもしれない……
ってちが~~う!
私がやるのは、
仙女!天女と聞き間違えてんじゃないぜっ!

「仙女、仙女。」
強めに二度連呼した。

ふ~ん。魔女じゃないんか?

そう言われて、はたと困った。
私が演じるのは
シンデレラに魔法をかけて舞踏会に行かせる仙女。
魔女と仙女の違いはなんなのだろうか?

なんとなくの私のイメージだと、
魔女は薬草とかいろいろ使って
得体のしれない薬を作ったりする悪いイメージ。
仙女は、魔法をつかって
人を助けたり幸せにするイメージだ。

「でも、オズの魔法使いには、
イイ魔女と悪い魔女が出てくるぞ。」
そう言われたらそのとおりだ。
そこに追い打ちをかける友人。
「じゃあ、仙女と魔法使いの違いは?」
えっと、えっと、魔法使いには男性もいるぞ。
仙女は女性。

でもって、魔女は老婆だったり、
うんと色っぽい女に化けたりする
仙女は化けることなく、年齢を超越した存在。
そうそう!いろんなものを超越しているのが仙女。
だって、仙人がそういう存在だもの。

そう言ったら、
「仙人ってすっごい爺さんだから、
仙女も婆さんなんじゃないの?」
と鋭いツッコミ。

わぁ、なんか混乱してきたぞ。

気になったので、辞書で調べてみた。
魔法使い (魔法を使う人)
魔女   (①ヨーロッパの俗信で、人に害悪を与える魔力をそなえている女性。
      ②悪魔のような女、また、不思議な力をもった女)
仙女   (女の仙人)
仙人   (①中国の道教の理想とする人間像。山中に住み、不老不死の術を修め、
      神通力を持った人。
      ②世俗的な常識にとらわれない、無欲な人) 大辞林より

なんだ、だいたい私のイメージは合っていたではないか。

と、待てよ。
仙女が、女の仙人だとすると中国の言い伝え。
それなのに、なぜ西洋の物語である
シンデレラに出てくるのだろう?

まぁ、いい。
実は、今回私が演じる仙女は、
一見、気高く凛としているようで、
実は世俗にまみれている。
しかも、たいした魔法は使わない。

シンデレラも、王子さまも、どこかおかしい。

大人と子どもが一緒に見られる音楽劇と銘打っているのだが、
脚本は日本の不条理演劇の第一人者 別役実。

不条理なのである。
すべてが、え?なんで?どうして?
そこっ?
みたいなやりとりが続くのだ。

登場人物が集まって、あーだこーだと
不思議でおかしなやりとりが続いていくなかに、
オリジナルの歌が12曲はいる。

仙女も、どこかおかしい。

友人からはまた、
「あんたの演じる役はほんとに一貫性がないよねぇ」
と苦笑いされそうだ。

稽古はこれを書いている8月末現在、佳境に入っている。

音楽劇「歌うシンデレラ」
9月16日~19日 芸術村PIT2ドラマ工房
平日は20時~
土曜は14時~と19時~
前売り一般2000円 中高生1500円、小学生1000円。
ピアノの生演奏もついて、この価格。

これをお読みの皆さま。どうか、ご来場くださいませ。
どこかおかしい仙女の私が、お待ちしております。

- Profile -

東 千絵

東 千絵 (ひがし ちえ)

「プロダクション・アーニング」代表。CM・番組ナレーション、イベント出演、司会、映画・ドラマの方言指導などを手がけるかたわら、地元の演劇集団K-CATに所属。
電子書籍「そうだったのか、日本食」など、ライターとしても活躍の場を広げている。

バックナンバー

10月1日 第三十七回 「またね!」
9月1日 第三十六回 「苦手は、悪知恵で乗りきった」
8月1日 第三十五回 「命の終わらせ方」
7月1日 第三十四回 「お酒と私」
6月1日 第三十三回 「千里の道も一歩から」
5月1日 第三十二回 「女ごころの最後の悪あがき」
4月1日 第三十一回 「ドラマオーディション体験記」
3月1日 第三十回 「逃げ道が見つからないので、きんかんの甘露煮」
2月1日 第二十九回 「そのドアを開けてはいけない」
1月1日 第二十八回 「正月支度」
12月3日 第二十七回 「劇処 シャッフルステージ」
11月1日 第二十六回 「乗っかりそびれたハロウィン」
10月4日 第二十五回 「女って、生きているかぎり闘い続けるものなのよ」
9月3日 第二十四回 手塩にかけたナレーターたちのデビュー
8月1日 第二十三回 大人、大人、言いすぎじゃないの?
7月5日 第二十二回 靴が見つからない
6月8日 第二十一回 地獄の抑止力
5月3日 第二十回 最後まで笑顔
4月3日 第十九回 桜を見ずに逝った人
3月1日 第十八回 うるう年の薔薇
2月1日 第十七回 奥手な女子の初バレンタイン
1月2日 第十六回 愛しの近江町市場
12月1日 第十五回 どのツラさげて
11月1日 第十四回 結婚式の思い出
10月1日 第十三回 輝きの秘密は、言わぬが華
9月1日 第十二回 魔女と仙女と魔法使い
8月1日 第十一回 去っていった古女房
7月1日 第十回 恥ずかしかった誕生日の夜
6月1日 第九回 撮影裏ばなし
5月1日 第八回 歌うシンデレラと、歌えない仙女
4月1日 第七回 台湾、満喫、満足、満腹の旅
3月1日 第六回 熟年サラリーマンのプラトニックラブ
2月1日 第五回 報われないけど、やり甲斐のある仕事
1月1日 第四回 泣きたいときは泣いてもいいのか
12月2日 第三回 持てあました、夢見る権利
10月30日 第二回 煙草とトワレ
10月1日 第一回 ヒロインはいつもリカちゃん